栃木県出身の学生向けイベントレポート「ジモト好きは集まらナイト」編
地元から離れて住んでいるけれど、地元のことが好き。地元のことが気になる。
そんな想いを持った東京圏在住の栃木県出身の学生が集まったイベント「I ♡ TOCHIGI ジモト好きは集まらナイト」が都内で開催されました。
これは栃木県が主催する栃木県出身者のコミュニティ「Jimoto TOCHIGI(ジモトトチギ)」の取り組みのひとつ。地元から離れて住んでいる人へ、栃木のたくさんの「ひと・もの・こと」に出会うきっかけをつくり、東京圏から栃木を盛り上げるために実施しているプロジェクトです。
ジモトトチギが始まって今年で2年目で、たくさんの栃木県出身者がつながり、新しい「こと」が起きはじめています。
ぞくぞくと集まった栃木県出身の学生たち。イベントに参加した理由聞くと、こんな声がありました。
栃木の良いところとか、就職先を知りたい(栃木市出身・1年生)
両親もいるし、地元が気になる(上三川町出身・3年生)
将来は地元で教師になろうと思っているので、今から栃木のことを知っておきたい(大田原市出身・3年生)
地元が同じ友達が欲しい(栃木市出身・1年生)
今回のイベントは、栃木県にUターンした先輩のトークセッションや、栃木ゆかりのカルタを使ったアクティビティを通して、地元のことを知り、自分の未来を考えるきっかけをつくります。
ここからはイベントの内容と、学生たちの声を中心に紹介していきます。
司会進行を務めるのは、専修大学に通う石崎舜也さん。昨年、同様に開催したジモトトチギのイベントに参加したことがきっかけで、県外在住の栃木県出身者の学生団体「TCC(Tochigi Chatting Community)」を立ち上げました。
石崎さんの元気な進行とともに、I ♡ TOCHIGI ジモト好きは集まらナイトが幕を開けました。
地元は自分のやりたいことを表現できる場所
栃木県へUターンした先輩として、ゲストでお話しいただいたのは佐藤寛記さん。大学進学で県外に出て、卒業後は都内で不動産関連の企業で多忙な日々を送っていました。
その後4年前に地元の下野市にUターンをして、家業の有限会社佐藤燃料店で勤務しながら、地域を盛り上げる活動を積極的に行っています。なかでも、2018年6月に設立した子ども向けの理科実験教室「シモツケラボ」は、楽しく質の高い学びの体験ができると子どもや親御さんたちからの支持を受け、注目されている取り組みです。
そんな佐藤さんからは、都内で社会人をしていた時の仕事や、どうしてUターンを決断したのか、現在はどんな想いで働き、地域に関わっているのかの話を伺いました。
「ぶっちゃけ、栃木へのUターンはおすすめですか?」
質疑応答では、こんな核心をつく質問が。佐藤さんはこう答えました。
「自分が人生で優先したいことによって、答えは変わると思います。東京でなければできないこともあるし、逆に栃木でなければできないこともあります。僕自身は就活していた頃、リーマンショック直後ということもあり、バリバリ働きたいと思って都内の不動産会社を選びました。
その後、改めて自分が何をしたいか考えた時に、仕事でお金を稼ぐことだけではなく、多くの人と関わり、自分のやりたいことを形にしたいと思ったんです。そして、お互いの事業やプロジェクトを応援できる仲間と信頼関係を築き、ともに活動したいという想いが強くなりました。
僕にとってそれができるのが地元でした。みなさん全員に栃木に帰った方がいいと言うつもりはありません。自分がやりたいことを表現できる場所はどこか、という視点で選んでみてください」
Uターンはあくまで手段。大切なのは何がやりたいのかだ、という本質的な意見を聞かせてくれました。
学生目線で新しい「下野カルタ」をつくってみよう
ここからのファシリテーターは、コミュニティデザインラボmachi-ku代表の安藤哲也さん。
栃木県の名産や文化などが題材になっているご当地カルタの「下野カルタ」を使ってワークショップをしていきます。
下野カルタは、昭和52年に「私たちのふるさとを見つめ直そう」という趣旨のもと、栃木県文化協会さまのご尽力によって、郷土の文化財、行事等を詠み込んだ作品を広く県内から公募し、生まれました。昔は県内のいろんな地域で遊ばれていたカルタです。会場のほぼ全員が、下野カルタのことを知らなかったそうなので、とても新鮮な反応をしていました。
まずは、自分の出身市町にゆかりのあるカードを選んでグループごとに自己紹介です。
「那須与一は、大田原市にゆかりのある武士で……」
「栃木市の岩舟エリアには、みかも山という山があって……」
普段、東京にいるとなかなかする機会がない地元トーク。
同じ栃木県出身とはいえ、栃木県はなかなか広くて市町単位に踏み込んだローカル情報は通じないこともあります。それが通じた時はとても嬉しくなるし、知らない人へ紹介する体験もまた新鮮なもの。そんな地元トークで終始盛り上がっていました。
続いて、手元の栃木県に関する情報資料をもとに、栃木の名物や名所を含んだ下野カルタを「あ」から「わ」まで、グループごとにオリジナルでつくっていきます。
資料をめくりながら、どれを使うか考えるところから始まります。題材はグループ内ではかぶってはいけません。50枚近くのカルタを作るのは、知っている範囲だけでやろうと思うとなかなか大変なので、自然と会話が生まれます。
「むげんに ひろがる しばざくら」
「おっかなびっくり けんみんのあじ しもつかれ」
などなど、個性豊かな句が出来上がりました。
その後、自分たちで作った下野カルタを実際にプレイ。最初は少しだけぎこちなかったグループも、この頃にはすっかり打ち解けています。
「地元なのに知らないことがたくさんあったことを実感しました。カルタづくりを通して知れてよかったです」という声も。地元のことを知るきっかけにもなりつつ、参加者同士の親睦を深めるツールにもなりました。
栃木ゆかりの料理を食べながら交流会
ここからは交流会です。ケータリングを担当してくださったのは、渋谷区神宮前にある「ことり食堂」の中里希さんです。
中里さんご自身も宇都宮市出身。神宮前でランチの時間帯に日替わり定食食堂を営んでいます。今回のお料理は、栃木県のお米や野菜を使ってつくってくださいました。
お料理の紹介を伺ったところで乾杯。ここからは自由に交流会をしていきます。地元が同じで、今は首都圏に住んでいる。その共通項だけで親近感が湧き、会話が盛り上がってしまうのが、地元トークのすごいところです。
交流会中に、みんながつくったカルタを全て掲示。気に入った札があったらシールを貼って人気投票をしました。
上位に選ばれたカルタのひとつがこちら。
「えがおが かわいい とちまるくん」
とちまるくんの似顔絵が可愛い、と大人気でした。
離れて住む学生たちが抱く、地元への想い
イベントの最後に、学生たちに地元へ抱いている想いを伺いました。
「栃木県民の心はあったかい!だから大好き」
「栃木は東京と違ってのんびりしていて、住みやすいし人も優しい。栃木が大好きです。栃木に帰りたい!」
「最近あまり実家に帰れてないんですよね。久々に帰りたい!!」
「ニラそば好き!」
「栃木って良いところ。よりたくさんの人に知ってもらいたい」
「私の居場所は栃木にある!今は東京に出ちゃっているけれど、将来的に帰りたいと思うし、今もどんどん関わりたい!」
「魅力度ランキングでは順位が低いけれど、良いところいっぱいあるぞ!」
「魅力度ランキングUPさせたい!もっと上位になれるはず!」
「地元の農業を盛り上げたい!」
地元は大好きというよりも、大切な場所。
イベントの冒頭で、登壇者から「地元のこと好きですか?」という問いかけがありました。そこですぐに「大好き」と挙手をした人は、実はそこまで多くはありませんでした。「まあ好き」という人たちがほとんど。でも、それがリアルなのです。
「大好き」というよりも、「大切に想っている」「気になっている」という言葉の方がしっくりくる人たちの方が多いようでした。地元には幼いころからなじみのある場所があったり、友人や家族がいたり、美味しいものがあったり、大切なものがそこにあることでしょう。地元への想いの持ち方はひとそれぞれです。
地元が大好きという人だけではなく、心のどこかで少しでも気になっている人たちへ。地元と交わるきっかけをJimoto TOCHIGI(ジモトトチギ)はこれからも提供していきます。
※本レポートは、本企画にご協力いただいている宇都宮大学地域創生推進機構COC+推進室さまからご提供いただいた内容を一部修正・加筆し掲載しています。